2026.10.5
点検や修理の記録が機材ごとに残っていないと、修理か買い替えかを決める材料が、修理の見積書だけになります。見積額が高いのか妥当なのかは、同じ機材に過去いくらかけたか、あと何年修理を受けられるか、年に何回使っているかが分からないと判断できないからです。
対象は、カメラとレンズを中心に、バッテリーや記録メディアを含む撮影機材です。メーカーが公表している点検の料金、部品の保有期間、保管と電池の注意を、2026年10月5日時点の公式ページで確認し、記録する項目と判断の目安に組み込みました。
履歴表は、機材の台帳とは別に、点検や修理のたびに行を足す表です。台帳には機材ごとの固定の情報が並び、履歴表には出来事が時系列で並びます。履歴表には、次の項目を持たせます。
項目 | 書く内容 | 使う場面 |
|---|---|---|
個体番号とシリアル番号 | 管理番号と、機材本体のシリアル番号を対にして書く | どの個体の履歴かを取り違えない |
取得日と取得価格 | 購入した日と、税込の価格 | 買い替えの判断で、同等品の価格や経過年数と比べる |
点検 | 日付、内容、出した先、費用 | 次の点検の時期を決める |
修理 | 日付、症状、依頼先、見積額、確定額、預けていた日数 | 買い替えの判断。同じ症状の再発の確認 |
状態 | 貸出できる、点検中、修理中、廃用など | 次の持ち出しリストに載せるかを決める |
使用量 | 持ち出した回数。シャッター回数や電池の劣化度を確認できる機種では、その数値 | 点検の時期と、買い替えの判断 |
修理対応期間 | メーカーが公表している終了時期。公表がなければ、その旨 | 買い替えの計画 |
廃用 | 廃用日と、廃棄・売却・譲渡の別 | 台帳の整理 |
返却のときに記録した不調は、そのまま修理の行の元になります。返却時に何を記録するかは、撮影機材の持ち出し・返却チェックリストで扱っています。
メーカーは、有償の点検とクリーニングのメニューを用意しています。料金は、2026年10月5日時点の公式ページの税込価格です。
メーカーとメニュー | 内容 | 料金(税込) |
|---|---|---|
キヤノン あんしんメンテ スタンダード | カメラとレンズ1本の基本の点検・クリーニング。カメラかレンズの単体でも同じ料金 | 5,500円(追加のレンズは1本2,200円) |
キヤノン あんしんメンテ プレミアム | 画質に関わるパーツや動作の点検。交換した部品の代金は別 | カメラ11,000円から、レンズ8,800円から |
ソニー αクリーニング&メンテ | ボディ1台とレンズ最大2本 | 6,600円(クリーニングのみは3,850円) |
ニコン プラザ点検パック Aコース | 点検、センサー清掃、外観清掃、ピント点検調整(Z シリーズはピント点検のみ) | 3,960円 |
ニコン プラザ点検パック Bコース | 点検、センサー清掃、外観清掃 | 3,300円 |
ニコン プラザ点検パック Cコース | 点検、外観清掃 | 2,200円 |
周期については、キヤノンが、スタンダードを3か月から6か月単位の定期的な点検・クリーニング向け、プレミアムを年に一度、と案内しています。ソニーとニコンの点検メニューのページには、周期の記載がありませんでした。ニコンのプラザ点検パックの各コースは、保証の内外にかかわらず有料で、現在の作動を確認するものであり、点検後の動作を保証するものではない、と書かれています。
点検の周期は、持ち出しの回数と持ち出し先で変わるので、自社で決めます。年に数回しか使わない機材と、毎週現場に出る機材を、同じ周期にする必要はありません。点検に出している間は、その機材を貸出リストから外し、代わりの機材を決めておきます。
カメラとレンズの保管について、メーカーの案内は次のとおりです。
メーカー | 保管の案内 |
|---|---|
ソニー | ドライボックス(防湿庫)か簡易ドライボックスに保管する。最適な湿度は40%から50%前後。湿度計が付いていないドライボックスは、湿度計を一緒に入れて管理する。バッテリーはカメラから外して保管する |
ニコン(Z fc の使用説明書) | 換気の悪い場所や、湿度が60%を超える場所を避ける。温度が50℃以上、または−10℃以下の場所も避ける |
キヤノン(FAQ、2026年6月25日更新) | 防湿庫か、シリカゲルなどの乾燥剤を入れた密閉容器に保管するとカビを抑えられる。定期的に使うこともカビの防止になる |
湿度の数字は、ソニーが40%から50%前後、ニコンが60%を超えない、と置き方が違います。防湿庫には湿度計を入れ、設定した湿度を記録に残しておくと、あとから保管の条件を確かめられます。
バッテリーは、個体ごとに劣化の度合いが違うので、個体番号で記録します。ニコンのFAQ(2026年7月24日更新)には、対象のカメラなら、メニューの電池チェックで劣化度を数値で確認でき、劣化度が0のときは劣化しておらず、4になっているバッテリーは寿命なので新しいものと交換する、と書かれています。電池工業会は、使用時間が極端に短くなった電池は使わない、と案内しています。劣化度を確認できない機種では、満充電からの使用時間を、同じ条件で記録します。
電池に異常があったときの扱いも、決めておきます。電池工業会は、異臭、発熱、変色、変形、膨れに気づいたら、ただちに使用を中止し、膨れた電池を無理に機器へ取り付けない、としています。製品評価技術基盤機構(NITE)は、リチウムイオン電池を使う製品の異常の例として、膨らんで変形している、焦げたにおいや化学薬品のようなにおいがする、充電中に以前より異常に熱くなる、を挙げています。経済産業省は、充電は、なるべく起きている時に、製品の様子が確認できる場所で行うよう呼びかけています。異常があった個体は、状態を使用中止に変え、履歴表に症状を残します。
長期間使わないバッテリーの保管は、メーカーで案内が違います。キヤノンは、数か月以上使わないなら、カメラから抜いて保護カバーを付け、30%から50%の充電容量で、冷暗所(15℃程度)に保管し、半年に1度を目安に30%から50%まで充電する、としています(2020年5月13日公開のページ)。ソニーは、長期間使わない場合、1年に1回程度充電してカメラ本体に装着し、使い切ってから保管する、としています。どちらに従うかは、使っているメーカーの取扱説明書で決め、長期保管中の個体には、最後に充電した日を記録します。
シャッターの耐久回数は、機種によって公表の有無が違います。キヤノンのEOS R6 Mark IIは、メカシャッターの標準的な撮影を想定した自社試験で、約40万回の作動テストをクリアしたとされています。ソニーのα7R Vは、約50万回のレリーズ耐久性と案内されています。ニコンのD850は、シャッターユニットをカメラに実装した状態で、20万回のテストをクリアしたと書かれています。ソニーのα7 IVのページには、耐久性と低振動性への言及はあっても、回数は見つかりませんでした。
これらは各社の試験の結果として書かれた数字で、その回数まで動作を保証する文言は、読んだ範囲では見つかりませんでした。公表がある機種では、自社の機材の使用量と比べる目安になります。公表がない機種では、同じ型の機材の、過去の修理が出た時点の使用量を記録しておくと、次の判断の材料になります。
修理を受けられる期間は、メーカーによって公表の形が違います。
メーカー | 公表の形 | 例 |
|---|---|---|
ソニー | 機種の製造打ち切り後も、一定期間、補修用性能部品を保有する。製品の種類ごとに年数を掲載(2025年7月現在) | デジタル一眼カメラ α は7年、サイバーショットは5年、ハンディカムは8年 |
キヤノン | 機種ごとに修理対応期間を終了月で掲載。各終了月の末日まで(2026年10月1日現在) | EOS R6は2030年5月、EOS 5D Mark IVは2032年11月、EOS R5は未定 |
ニコン | 修理サービスの提供期間を製品ごとに定めるが、部品の在庫状況によって変更する場合がある。修理を受け付けられる製品の一覧を公開している | 年数の記載はなく、製品ごとの一覧で確かめる |
履歴表には、持っている機種ごとに、この終了時期を書いておきます。ソニーのように年数だけを示す場合は、製造が打ち切られた時期から数える必要があるので、製造が打ち切られた時期は、メーカーに確かめて書きます。
修理か買い替えかは、次の4つを並べて決めます。
見る項目 | 見る場所 | 判断 |
|---|---|---|
修理対応期間 | 履歴表。メーカーの公表 | 期間が終わっている、または近いなら、買い替えを前倒しにする |
見積額÷同等品の購入価格 | 修理の見積書。メーカーの直販ページなど、公式の現在価格 | 自社で決めた基準以下なら修理に出す |
取得からの経過と使用量 | 履歴表の取得日、シャッター回数、劣化度 | 公表値と比べ、近いなら買い替えを検討する |
年に何回使っているか | 持ち出しの記録 | 年に数回なら、買い替えず借りる運用も選べる |
基準は、例として5割に置けます。見積額が同等品の購入価格の半分を超えたら、買い替えを検討する、という決め方です。5割という数字に根拠があるわけではなく、自社の判断をそろえるための仮の値です。修理後の保証の内容も、見積もりのときに確認します。ニコンの修理サービス規約には、利用したサービスによって修理保証の内容が異なる、と書かれています。
年に何回使っているかが少ない機材は、買い替えるより借りるほうが安い場合があります。その計算は、撮影機材は買うか借りるかで、レンタル料金から損益分岐の回数を出す形でまとめています。
点検中・修理中の機材は、貸出リストに載せません。台帳の状態を、貸出できる状態から変えておくと、次の案件のリストをつくる人が気づきます。状態を戻すときは、点検や修理の結果を、履歴表に書いてから戻します。
Werpには、備品の状態にメンテナンス中があり、メンテナンス中の備品は、予約も貸出もできなくなります。状態を変えた履歴も残ります。詳しくは、Werpの予約・貸出の機能で説明しています。取得日と取得価格は、備品ごとに持てます。資産管理台帳として使う方法も、ページにまとめています。一方、Werpには、点検の日付や、修理の内容と費用を入れる専用の欄はありません。点検と修理の内容は、この記事の履歴表のような、別の表で持つことになります。
株式会社Creators Teamは、備品管理SaaSのWerpを開発・提供しています。この記事の履歴表と判断の目安は、Werpを使わなくても使える形で書いたもので、本文の2か所でWerpの解説ページへリンクしています。
キヤノン、ソニー、ニコン、電池工業会、製品評価技術基盤機構、経済産業省の情報は、2026年10月5日に各公式ページで確認した内容です。各社・各機関への問い合わせはしていません。料金や期間は、改定で変わります。税込・税別の区別は、各社の表記のとおりです。点検の内容や機種ごとの扱いは、使用する機種の取扱説明書とメーカーの案内に従ってください。
記載している製品名・社名は、各社の商標または登録商標です。記載内容の誤りや古くなった情報にお気づきの場合(各社のご担当者様を含みます)は、お問い合わせ窓口までご連絡ください。確認のうえ、速やかに訂正します。
出典(2026年10月5日確認)
キヤノン あんしんメンテ: https://canon.jp/support/repair-index/maintenance
キヤノン 修理対応期間(個人のお客さま向け商品一覧): https://canon.jp/support/repair/period
キヤノン FAQ「【カメラ】梅雨を乗り切るカメラのお手入れ方法」: https://faq.canon.jp/app/answers/detail/a_id/103435/
キヤノン「知らないと損!?カメラのバッテリーの正しい保管方法」: https://personal.canon.jp/articles/tips/howto/camera14
キヤノン EOS R6 Mark II 操作性・信頼性: https://personal.canon.jp/product/camera/eos/r6mk2/feature/reliability
ソニー αクリーニング&メンテ: https://www.sony.jp/support/ichigan/repair_service/sensor-cleaning.html
ソニー 補修用性能部品: https://www.sony.jp/support/cs/admi/parts/
ソニー カメラとレンズの保管方法: https://support.sony.jp/electronics/support/articles/00364812
ソニー α7R V 製品特長: https://www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-7RM5/feature_4.html
ソニー α7 IV 製品特長: https://www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-7M4/feature_4.html
ニコン プラザ点検パック: https://nij.nikon.com/support/servicecenter/maintenance.html
ニコン 修理サービス規約: https://nij.nikon.com/support/repair/legal.html
ニコン 修理受付可能な製品一覧: https://nij.nikon.com/support/web_repair/PartsgraphReferInit
ニコン Z fc 使用説明書「保管について」: https://onlinemanual.nikonimglib.com/zfc/ja/15-06.html
ニコン FAQ「電池の劣化度について」: https://nij.nikon.com/support/faq/products/article?articleNo=000052972
ニコン D850 製品特長: https://nij.nikon.com/products/lineup/slr/d850/features04.html
電池工業会「安全に使うために」: https://www.baj.or.jp/battery/safety/safety16.html
製品評価技術基盤機構(NITE)「『夏バテ(夏のバッテリー)』にご注意を」: https://www.nite.go.jp/data/000161880.pdf
経済産業省 リチウムイオン電池: https://www.meti.go.jp/product_safety/consumer/lithium_ion_battery.html
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